LPレコードの作法 行方 均(レコード・プロデューサー/音楽評論家)

LPレコードは1940年代末に登場し、50年代半ばには一般化します。時あたかもハードバップが確立し、モダン・ジャズが後に"黄金時代"と呼ばれる10年間に向かわんとする時期でした。そう、世にいう"モダン・ジャズ大名盤"の多くは、LPレコードとして世に出たものです。"大名盤"を"大名盤"にしているのは、決して中身の音楽ばかりではありません。ルディ・ヴァン・ゲルダー、トム・ダウド、ロイ・デュナンといったジャズ録音のパイオニアたちが、それぞれの理想のサウンド作りを競いました。ジャケットも同様です。LPレコードと共に誕生した30センチ四方の新たなアート・フォームに、各レーベルは様々な意匠をこらしました。リード・マイルズ/フランシス・ウルフによるブルーノートの一連のデザインなどがよく知られています。

80年代後半のCD化以来、ジャケット・デザインは17センチ四方のミニチュアとなり、サウンドはディジタル化され、AB面もなくなりました。普通に聴くには大いに便利になりましたが、しかしLP時代の大名盤たちとの"真の"出会いは、ジャケットを手に取って眺め、ずっしり重いLP盤を取り出し、ターン・テーブルに置き、お気に入りのカートリッジをそっと外周に乗せる。そんな作法から始まるのではないのでしょうか?

PROFILE

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1988年、ブルース・ランドヴァル(当時、ブルーノート社長)やマイケル・カスクーナ(同プロデューサー)らの協力を得て、ブルーノートの姉妹レーベル「サムシンエルス」を東芝EMI内に設立。現在までに150タイトル近くの作品をリリースし、多くのジャズ作品やミュージシャンを紹介している。