2016年1月26日に創刊した『サンダーバード2号&救助メカ』は、2017年12月5日に完結した。しかし完結号発売前から、新シリーズへの期待感が高まっているとの報告が寄せられる。そこで編集部はファンの要望に応えるべく、各方面からスタッフを招集。シリーズ完結直後からプロジェクトを始動させた。
サンダーバード2号本体に加えて各種救助メカやコンテナ、さらに専用ディスプレイまで完備した。
提出された複数のプランのうち、もっとも有力だったのが、本誌監修者・柿沼秀樹氏による『サンダーバード秘密基地をつくる』だった。国際救助隊の秘密基地(トレーシー島)を地下施設も含めて再現するというもので、完成すれば縦横60cmのビッグサイズになる。
検討の結果、柿沼氏の企画をもとに基本設計とモックアップの作成を開始した。まず劇中の映像と当時の設定資料を基にして島の外側(地表部分)と地下施設を同時に設計。あわせてメカの発進ギミックなどのモータライズ関係を設計した。作業は難航したが、努力の甲斐あって少しずつ進展した。
上の図は外装をはずした島内部のイメージ。普段は見えない部分も詳細に設計されている。
上図はトレーシー・ヴィラとサンダーバード1号発射サイロ周辺の3Dデータ。これを基にモックアップが作られた。
『サンダーバード2号&救助メカ』が完結してからおよそ3か月後、「サンダーバードファンの集い(デアゴスティーニ主催)」が、渋谷の東京カルチャーカルチャーで開催。上映会やトークショー、プロップ(メカやパペット)展示が行われた。ここでサンダーバード秘密基地のプロトタイプがお披露目された。はじめて見る基地の威容とサイズにファンは興奮し、ギミックの動きを食い入るように眺めていた。
イベントが終了してもファンはモックアップの周りに集まり、スタッフの解説に真剣に耳を傾けていた。
イベント終了後に大活躍したのがジオラマ監修・設計の村上一昭氏だ。完成したプロトタイプはまだまだ改良の余地が多くあり、各パーツの精度をさらに上げなければ、ファンが納得する模型にはならない。さらにギミック面にも不安があり、動作不良の原因と対処法を練らなければならなかったからだ。
今回の模型はジオラマ的要素が強く、表面の岩の質感や樹木の生える様子をどれだけリアルにできるかで、見た目の完成度が大きく変わる。基地施設についても、そのまま組み立てるよりも塗装や汚しを施すことで、存在感を際立たせられる。村上氏は模型をさらにブラッシュアップしていった。
島の外観はもちろん、地下基地部分も、十分に満足のいく出来栄えとなった。
本シリーズ製作にあたって、『サンダーバード』研究の第一人者と模型製作のプロフェッショナルに協力していただきました。
1958年生まれ。模型雑誌『HOBBY JAPAN』、ガンプラのバイブル『HOW TO BUILD GUNDAM』の企画編集を経てアニメ作品の原作やメカデザインを手がける。日本科学未来館で開催された「サンダーバード博~世紀の特撮が描くボクらの未来~」の展示ギャラリーを監修。
「初放送から半世紀を経た今でもなお『サンダーバード』は根強い人気を誇りますが、それは作品の魅力だけではなく、作品と並行して生産されて市場に並んだ、数えきれないほどのキャラクター商品が発する求心力の賜物でした。1960年代の高度成長期と重なったこともあり、当時の日本でリリースされた『サンダーバード』関連商品は質・量ともに英国本国の商品に匹敵するほどで、ファンの心をわしづかみにしたのでした。このモデルには、そんな当時の懐かしい思いや感動、熱狂を呼び覚ましてくれます。とくに秘密基地ごっこ遊びをした方なら、その思いはひとしおのはずです」
ミニチュア造形家。1981年、日本で初めてドールハウスの専門書を出版。CMや広告などでオリジナルミニチュアハウス、ジオラマを製作するなど幅広く活躍中。
「ある日曜日夕方に、突然はじまった『サンダーバード』。次々に登場するメカ・デザインの恰好よさに驚嘆し、秘密基地の各ディテールのリアルさに、感動し、白黒の画面ながら、すぐに夢中になりました。後日、友達の家のカラーテレビで見て色の美しさにも、感動したものでした。ゴツゴツした質感の岩山に、そよ風に揺れるヤシの木のモスグリーン、優雅な曲線のらせん階段つきハウスの際立つホワイト、南の島らしき空は僅かにグレーが入ったライトブルー、一方の格納庫のオイル臭が漂うような、ダークグレイ。そんな色彩のレイアウトの美しさにも惹きつけられました。この秘密基地は、そんな当時の驚きや、感動の数々を織り込んでデザインしました」