「はやぶさ2」プロジェクトの情熱に触れる
関係者特別インタビュー!!

Vol.7

宇宙航空研究開発機構(JAXA)名誉教授
「はまぎん こども宇宙科学館」館長
的川泰宣 氏

日本だからこそ成し遂げられた
「はやぶさ」プロジェクト

初代「はやぶさ」が数多くの予期せぬ危機を乗り越えられた秘密は? そして「はやぶさ2」に期待するものとは? 「はやぶさ」の広報担当としてプロジェクトを見守りつづけ、現在は「はまぎん こども宇宙科学館」の館長として宇宙教育活動の分野で活動を続ける的川泰宣さんにお話をお聞きしました。

――的川先生の師・糸川英夫博士について教えてください。

まさに「日本の宇宙開発の父」。糸川先生は太平洋戦争中、戦闘機「隼」の主翼の設計をした天才技術者として知られていましたが、戦後は飛行機の研究が禁じられ、麻酔の研究でシカゴ大学に招聘されました。そこの図書館で「スペースメディスン」という本に出会い、日本でもロケットを開発しようと思い立ったのです。帰国後先生は、東大の生産技術研究所で若い人たちを集めてロケット開発を始め、その思いは1955年、ペンシルロケットとして開花しました。そのとき私はまだ中学生。名前は存じ上げていましたが、まさか大学でその先生の研究室に入るとは思いませんでした。「金がなければ頭を使え」というのが先生の口癖で、「はやぶさ」のプロジェクトマネージャ川口淳一郎君をはじめ、さまざまな研究者に大きな影響を与えています。私が「はやぶさ」に関わるようになったのも先生のおかげといえるでしょう。糸川先生についてはいろいろな評価がありますが、天衣無縫、スケールの大きな第一級の人物であったことは間違いありません。

館長室には今も糸川英夫博士のレリーフとともに、はやぶさの模型が飾られている。

――小惑星イトカワも糸川博士にちなんで名づけられたものですね。

イトカワはMIT(マサチューセッツ工科大学)のリンカーン研究所のグループが見つけた小惑星でした。命名権は彼らにあったわけですが、「日本のプロジェクトのターゲットに選ばれたので名前を付けさせてほしい」と申し入れ、命名権を譲ってもらいました。一方「はやぶさ」が打ち上げられた2003年は、手塚治虫さんの「鉄腕アトム」の誕生年だったことから、アトムにしようという意見が多かったのですが、獲物(小惑星)にさっと飛びかかり、試料を採取することから「はやぶさ」とすることになりました。外国人に意味を尋ねられたらファルコンだと答えればいいし、結果的にいい名前だったと思います。

――川口淳一郎さんはどんなプロジェクトマネージャだったのでしょうか?

川口君は僕よりひと回り下だけれど、自分にも他人にも非常に厳しい男。プロジェクトはいろいろな人の意見を聞いてまとめていかなければいけませんが、その厳しさがあったからこそ、予算的に厳しかった「はやぶさ」プロジェクトを成功に導けたのだと思います。NHKの番組で「『はやぶさ』が成功した原因をひとつの言葉で」と聞かれ、私は「適度な貧乏」と答えました。資金が乏しかったから、私たちは足を使い頭を使い、全国の中小企業や町工場を回って「はやぶさ」を作り上げました。少人数とはいえ、みんなが「はやぶさ」のことを細部までよく知っているから、ピンチに陥ったときには次から次へとアイデアが出てくる。「金がないなら頭を使え」という糸川先生の教えが活きているんですね。川口君からは「適度な貧乏どころじゃない」とクレームが来ましたが(笑)。「はやぶさ」は川口君がイオンエンジンと運命をともにするという覚悟で提案し、彼だからこそ成し遂げることができたプロジェクトだと思います。

――「はやぶさ2」の津田雄一プロジェクトマネージャに期待することは?

私が日本最初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げたのが28歳のとき(1970年)。津田君が「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャに就任したのが39歳のときですから、私はあの頃を思い出して、「日本の宇宙開発のピークともいうべき出来事に30代で出くわすなんて、いいなあ」と思っていました。津田君は川口君に勝るとも劣らない優秀な人物です。「はやぶさ」と「はやぶさ2」のいちばんの違いは、川口君がいるかいないということですが、津田君は川口君の研究室にいたので「はやぶさ」のことも川口君のこともよく知っています。「はやぶさ」も到着までは、姿勢制御用のリアクションホイールが1個故障した以外は、非常に順調でした。しかし、トラブルが起こるのはこれからです。津田君はじめプロジェクトメンバーがどういう力を発揮できるかが、これからのカギだと思います。

――的川先生が提唱している「宇宙教育」とはどんなものなのでしょうか?

宇宙は自然科学だけでなく、音楽や美術などの芸術や哲学などの素材としても、子どもたちの心を育てるのに大変豊かな内容を持っています。いわゆる宇宙時代は、1957年、ソ連(現在のロシア)が世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げた時から始まったといえるでしょう。ピークともいうべきアポロ11号の月面着陸(1969年)から来年で50周年です。これからの宇宙時代は、宇宙空間に人間が進出していくだけではなく、世界平和、人類の幸福、命の大切さなど、よりよい人間の社会を形成していくために宇宙を利用していこうというものになるでしょう。宇宙から見れば地球は非常に小さな島のようなものです。島の中でみんながどのように幸せに暮らしていくかは、日本が昔から考えてやってきていたこと。地球は島になったのだから、島国で生活する知恵を宇宙開発やほかの分野でも使っていこうじゃないか。そんな日本が果たすべき役割を、これからの若い人は考えていってほしいと思います。そのとき「はやぶさ」「はやぶさ2」など、日本の特質をいかんなく発揮したプロジェクトは、非常に参考になるのではないでしょうか。

――最後に「はやぶさ2」を応援している人たちにメッセージをお願いします。

「はやぶさ」が打ち上げられたとき、私は内之浦宇宙空間観測所の所長をしていました。異動が決まっていたので当時は「これが所長として最後の打ち上げだな」と思っていただけでしたが、その後「はやぶさ」がこんな伝説のプロジェクトになるとは思ってもみませんでした。「はやぶさ」は映画化され有名になりましたが、「はやぶさ2」もこのまま安心して見ていられるようなかんたんなプロジェクトではありません。どんなことが起こっても、みなさんには「はやぶさ2」を応援しつづけてほしいと思います。

【イベント開催!】
はまぎん こども宇宙科学館 夏休み特別企画
「自由研究ラボ -やってみよう!作ってみよう!-」
期間:7月21日(土)~9月2日(日)
身近な材料ではやぶさ2などを作る「ガラクタ工作教室」や、天体望遠鏡を作る「チャレンジ教室」など、
夏休み期間は毎日イベントを開催中です。詳しくはホームページをチェックしてください。
住  所 〒235-0045 神奈川県横浜市磯子区洋光台5-2-1
開館時間 9:30~17:00
※最終入館は16:00まで
※7月21日(土)~9月2日(日)の夏休み特別企画期間
中は、毎日9:00~開館します。
休 館 日 第1・3火曜日、年末年始、臨時休館
入 館 料 大人400円/小・中学生200円
※毎週土曜日は、小・中・高校生の入館料が無料となります。
H  P http://www.yokohama-kagakukan.jp
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