「はやぶさ2」プロジェクトの情熱に触れる
関係者特別インタビュー!!

Vol.3

「はやぶさ2」プロジェクト
ミッションマネージャ
吉川 真 氏

地球の生物と水の起源を求めアメリカ、ヨーロッパ、アジアと、世界各国が国際協力する「はやぶさ2」のミッション

現在は海外機関との調整役を務め、プロジェクトの提案から立ち上げまで、リーダーとしてチームをけん引してきた吉川氏に「はやぶさ2」への思いを聞いた。

―― 2018年「はやぶさ2 」の見どころは?

まずリュウグウがどんな小惑星であるかが一番の楽しみです。初代「はやぶさ」が探査した小惑星イトカワはレーダーで観測をしていたので、形がだいたいわかっていました。リュウグウはレーダー観測のデータがないので、着いてみて、どんなものかわかるのが楽しみです。

―― 小惑星イトカワとリュウグウはどのように違うのでしょう?

イトカワとリュウグウはそれぞれ、S型小惑星、C型小惑星と分類される小惑星で、両方とも岩石からできている小惑星です。しかし、C 型は有機物をより多く含んだ岩石からできていますが、S 型には有機物が少ないと考えられています。リュウグウの物質は、地球が誕生する前の状態からあまり変化していないと考えられるので、地球の生物のもとになった物質が含まれている可能性もあります。
地球は約46 億年前、小天体が衝突・合体してできました。そのとき地球の材料は一旦ドロドロに溶け、重い鉄が中心に沈み、そのまわりを岩石が覆ったマントルが冷え固まり、現在の地球になったと考えられています。
ですから、現在地球上にある物質は、一度溶けてしまったものであるため、地球誕生以前の物質とは変わってしまっています。ところが、小惑星のなかには、地球誕生以前の物質が残っていると考えられる天体が存在します。まさにリュウグウは、そのような天体なのです。
もっとも気になるのは、タンパク質のもとになるアミノ酸です。地球生物のアミノ酸の立体構造は、ほとんどが左手型と呼ばれるものです。化学的には右手型、左手型とも性質はほとんど同じなのですが、なぜか地球生物ではほとんどが左手型の立体構造になっているのです。その理由がわかれば、生命の起源に迫ることができるはずです。
もうひとつは水の起源です。地球の水は、どこから来たものかよくわかっていません。小惑星には液体の水はありませんが、「含水鉱物」と呼ばれる、岩石中に水分子が含まれるものがあります。リュウグウのサンプルにはその含水鉱物が含まれていることも期待しています。
太陽系のほかの惑星には、木星や土星の衛星など、氷としてたくさん存在していることはよく知られていますが、液体の水が表面にある天体は地球だけです。リュウグウのような彗星を起源とする説や、地球が生まれたときから水を含んでいたという説と諸説ありますが、水の起源については、多くの謎が残されているのです。

――ミッションマネージャの役割とはどのようなものなのでしょうか?

「はやぶさ」は、2005 年にイトカワに到着し、同年の12月に通信が途絶しました。当時は地球に戻ってくるのは難しく、サンプルを取るときの弾丸も撃てていないことがわかっていたので、小惑星の物質が取れている可能性も少ないと考えられていました。
そこで2006 年に、「はやぶさ2」というリベンジミッションを提案しました。そのときから「はやぶさ2 」プロジェクトが立ち上がるところまでは、最初はチームリーダー、そしてプロジェクトになってからはPMになっていました。その後PMは、周知のとおり、國中先生、津田さんと代わっていきました。
「はやぶさ」プロジェクトでは、メインのミッションが工学(技術的な実証)で、科学はおまけだった部分があります。一方の「はやぶさ2 」プロジェクトは、科学に重きが置かれていることもあり、「はやぶさ」に比べると関係者の数も増えました。
アメリカを中心として、アジア、オーストラリアなどの海外の科学者も参加しています。ESA(※ 1 )の「MASCOT」というランダーも積んでいるので、ヨーロッパの研究者も何十人か参加しています。
ミッションマネージャの役割は、いわばこうした関係者の取りまとめや、科学と工学との間の橋渡し、海外との交渉、一般の方々への広報など、人と人とのあいだを取り持つ役割です。簡単に言ってしまえば、いわゆる部活のマネージャのような、雑用係みたいなものかもしれませんね。

――なるほど。そういう意味では、国際協力ミッションという側面もあるのでしょうか?

そうですね。先日も「はやぶさ2 」の国際会議をしましたが、日本人も含め90 人近くがここ(相模原キャンパス)で議論していました。到着も近づいてきたので会議にも熱が入り、到着後の最終的な計画を立てました。
もっとも重要なのは、海外の宇宙機関との調整です。
とくに「はやぶさ2 」と通信をするとき、日本では臼田にある64mのアンテナ(※ 2)を使うのですが、地球の自転の関係上、1日に8 時間ほどしか通信できません。しかし、リュウグウ到着後は、24 時間連続して運用が必要になるため、日本のアンテナを使えない時間はNASA やESA のアンテナを使わせてもらいます。
このようにアンテナを融通してもらう代わりに、NASAの科学者を日本に呼んだり、少しリュウグウのサンプルをNASAに渡す、というような協定を結んでいます。アメリカの小惑星サンプルリターン計画「OSIRIS-REx 」とも協力関係を結んでいます。ESAにもいろいろな国があるため、それらをうまく調整していかなければなりません。

――「はやぶさ2」を応援しているみなさんに、何かメッセージはありますか?

「はやぶさ2 」がチャレンジするさまざまなミッションは、決して楽なものではありません。「はやぶさ2 」は「はやぶさ」の余韻もあり、はるかに多くの人に興味をもっていただいていることを実感しています。しかし、前回の経験があるとはいえ、初めてのチャレンジも多く、緊張しています。ぜひとも成功させたいと思います。探査機は遠く離れてはいますが、プロジェクトメンバー全員が頑張っていますので、ぜひ応援をお願いしたいです。

用語解説
※ 1
ESA:欧州宇宙機関(=European Space Agency )のこと。ヨーロッパ各国がドイツとフランスを中心に10カ国が共同で設立した宇宙開発・研究機関で、2010年2月までにさらに8カ国が正式加盟国として加わり、カナダが特別協力国として参加している。また、ハンガリー、ルーマニアなど5カ国が協力国(ECS)として参加しており、トルコ、ウクライナなど5カ国が協力協定に調印している。。
※ 2
臼田にある64mのアンテナ:臼田宇宙空間観測所にある、日本最大の直径64mのアンテナのこと。このアンテナは宇宙探査機の追跡管制を目的としている。
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