耳だけでなく、肌で感じられる音 大塚広子(JAZZ DJ)

物心ついたころ実家にあるレコード・プレイヤーを見つけて、スタートボタンを押してみた。レコードってなんか変だな、と思いながらもちょっと異次元の快感で、他の娘とは違うことしてるの、という優越感もイイ感じ。でも本当に変だったと知ったのはもう少し後の話。このプレイヤーがついに寿命を迎え自分で新しく買ったプレイヤーで同じ盤に針を落としたら、全く印象が違う。実家のプレイヤーは、回転盤のゴムがすっかり伸びきっていて曲の速さが遅くなっていたのだ。この一件で私のレコード熱が加速することになった。

私がレコードを買った初めの動機は、街で12インチサイズの大きな袋をもって歩きたかっただけで、内容は二の次。でもそれ以来、買ってきたレコードを毎日プレイヤーに置き、自分好みの曲の印象や音色を探し始めた。そんな10代の遊びが私の音源追求やDJの原点だったと思う。完成度が高いジャズも、気になるフレーズを自分勝手に嗅ぎつけてその部分だけ針を落してみたっていい。音が出る場所を目で見る。自分の手で音の出元を直に触れる。そんなレコードとのコミュニケーションによって、音は耳だけでなく肌で感じられるものになった。だから音楽はとっても愛しい。

PROFILE

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2004年以降、ワン&オンリーな"JAZZのグルーヴ"を起こすDJとして年間160回以上のDJ 経験を実施。渋谷の老舗クラブTheRoomにて13年目に突入した人気イベント「CHAMP」など日本中のパーティーに出演する一方、イベント・プロデュース業も多数こなしている。